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YouTube運用の内製化はなぜほとんど失敗するのか?現場で何度も見た「更新が止まる会社」の共通点

動画編集ソフトの画面を表示したノートパソコン

「ちょっと投稿頻度を減らして、その代わりクオリティを上げていこうか」

企業のYouTube運用に関わっていると、この言葉を聞くことがあります。

もちろん、投稿計画を見直すこと自体は必要です。でも、この一言をきっかけに、動画の質が上がることもなく、少しずつ更新が減っていく。そして最後は、誰も「終了します」と言わないまま止まってしまう。

私は、そんな現場を何度も見てきました。

AIを使って企画や台本のたたき台を作れるなら、YouTubeも社内で運用できそう。外注費も抑えられるし、その方が合理的ではないか。

経営者として、そう考えるのは自然なことです。

それでも、私が見てきた「とりあえず社員に兼務で任せる内製化」は、ほとんど同じようなところでつまずきます。

担当者が本気で取り組める評価と権限を、会社が用意していないのです。

この記事では、その失敗の流れと、内製化するなら最初に整えてほしいことをお話しします。

目次

1. AIで企画を作れても、「運用を続ける仕組み」は別に必要

「でも、企画も台本もAIに手伝ってもらえるなら、社内でできませんか?」

私も、AIを活用して内製化を進める方向には賛成です。

たとえば、営業でよく聞かれる質問を整理する。企画の切り口を出す。構成案を比較する。こうした使い方なら、担当者がゼロから考える負担を減らせます。

ただ、企画案ができた後には、こんな仕事が残っています。

  • 社長の撮影時間を確保する
  • 社内から事例や資料を集める
  • 内容の正確さを確認する
  • 編集を進め、公開日までに承認を取る
  • 公開後の反応を見て、次の内容を決める

「企画がある」と「予定どおり動画が公開される」の間には、かなりの距離があります。

AIが企画を10本提案してくれても、社長が撮影を後回しにし、担当者が本業で手いっぱいなら、動画は出ません。

内製化を考えるときは、企画を作れるかに加えて、それを実行し続けられるかまで考える必要があります。

2. 「君、YouTubeお願いね」で始まると、担当者には頑張る理由がない

よくある始まり方は、社長や役員が「うちもYouTubeをやろう」と旗を振り、自分が出演するケースです。

そして、総務や広報の担当者、比較的手が空いていそうな社員に、こう言います。

「企画とか日々の運用は、君にお願いするね」

ここで、担当者の評価や業務量まで見直している会社は、どれくらいあるでしょうか。

もともとの仕事には、納期や評価基準がある。一方でYouTubeには、何を達成すれば評価されるのかが決まっていない。成果が出ても給料が変わるかどうか分からない。

それなら、目の前の本業を優先しますよね。

「会社の仕事なんだから、そこは積極的にやってほしいんだけど……」

その気持ちは分かります。でも、担当者の立場で考えてみてください。

本業が遅れれば注意される。YouTubeを頑張っても評価されるか分からない。しかも、すぐに売上が出るとは限らない。

この条件でYouTubeを優先するのは、むしろ難しい判断です。

「担当者に熱意がない」と感じたら、まずは熱意を持って取り組める条件を会社が作っているかを見てほしいんです。

3. 社長の方針変更に、誰も意見を言わなくなる

評価が曖昧なまま運用していると、もう一つ問題が起こります。

社長が、

「今週は忙しいから、撮影はやめようか」
「この企画、気分が乗らないから変えたいな」

と言ったときに、計画への影響を説明する人がいなくなるのです。

本来なら、

「撮影を延期すると、来週の公開分がなくなります。時間を短くして2本だけ撮りませんか?」

と相談する必要があります。

でも、担当者にとっては、そこまで踏み込んでも評価されるとは限らない。相手は自分を評価する上司です。

「そうですね、ではそうしましょう」

この方が、波風は立ちません。

すると、チャンネルの方針が少しずつ、演者である上司の気分に左右されるようになります。

WebマーケティングTVの動画「YouTube案件でうまくいかなかった4つのケース」でも、演者・事業目的・成果が出る時期・各種制限という観点が取り上げられています。StockSunの公式解説では、演者の意欲低下や離脱、運用途中の目的変更などが失敗要因として整理されています。参考動画StockSun公式解説

私がこの話を自分の経験と重ねて感じるのは、出演する人の熱量に頼り切った運用は、非常にもろいということです。

社長が忙しい週にも、担当者が無理なく代案を出せる。その提案を、社長がきちんと検討する。

そこまで含めて、運用体制だと思っています。

4. 「量より質にしよう」から始まる、自然消滅の流れ

私が何度も見てきた流れをまとめると、こうなります。

段階社内で出てくる言葉実際に起きること
スタート「週3本、しっかり出していこう!」勢いで撮影・投稿を進める
負担が見え始める「本数を減らして質を上げよう」質の改善策が決まらないまま本数が減る
さらに忙しくなる「ショートで本数を確保しよう」目的より作業負担の軽さが優先される
立て直しを宣言する「本気の企画を週1本出そう」同じ作り方のまま週1本になる
最後「落ち着いたら再開しよう」次の撮影日が決まらなくなる

運用している方なら、心当たりがあるかもしれません。

「投稿頻度を減らして、質を上げるのは正しい判断では?」

もちろん、改善につながることはあります。

たとえば、本数を減らして生まれた時間を、顧客への取材や事例収集に使う。冒頭の構成を見直す。分かりにくかった説明を図解する。

そこまで具体的なら、意味のある変更です。

私が危ないと感じるのは、「何を改善するのか」「誰がやるのか」「いつ確かめるのか」が決まっていない減便です。

本数を減らしただけで、動画の質が自然に上がるわけではありません。

ショート動画への変更も同じです。届けたい相手や目的に合っていれば有効ですが、「長い動画を作るのが大変だから」だけで切り替えると、当初の目的を見失いやすくなります。

5. 10人のチームより、「責任・評価・権限が明確な1人」

YouTubeを始めるとき、社内のチャットグループに10人くらい集まることがあります。

最初は「よろしくお願いします!」「頑張りましょう!」と盛り上がる。

でも、しばらくすると、実際に動いているのは2〜3人。その人たちが忙しくても、残りのメンバーが仕事を引き取ってくれるわけではない。

これも、よく見る光景です。

人数を集めるだけでは、運用する力は増えません。

私が最優先で決めるべきだと思うのは、YouTubeの進行と改善に責任を持つPM、つまり運用責任者を誰にするか。そして、その仕事をどう評価するかです。

① YouTubeの仕事を、正式な評価に入れる

「頑張ってくれたら、そのうち考える」では曖昧すぎます。

目標の達成や改善への取り組みを、人事評価・担当手当・賞与などにどう反映するか、事前に決めておきます。

ただし、再生回数だけに報酬を連動させるのもおすすめしません。自社の顧客とは関係のない企画で、数字だけを追う動機になってしまうからです。

営業目的のチャンネルなら、たとえば次のように分けて考えます。

評価するもの指標の例
運用を実行できたか合意した公開計画の達成、撮影・確認の進行
改善に取り組めたか仮説を立てた検証と、その結果の振り返り
見込み顧客に届いたかサービスページへの流入、関連する問い合わせ
事業に貢献したかYouTubeを接点とする商談・受注

最初から売上だけで評価すると、成果が見える前に担当者が疲弊します。本人が動かせる行動と、時間がかかる事業成果の両方を見ることが大切です。

② 責任と一緒に、決められる範囲を渡す

公開本数に責任を持たせるなら、撮影日程や制作の進行に意見を出せる必要があります。

企画を改善してほしいなら、毎回すべてを社長の好みに戻される状態では難しいでしょう。

「この範囲はPMが決める」
「この内容は社長に確認する」
「確認はいつまでに返す」

この線引きをしておくだけでも、進めやすさは変わります。

③ 本業から、必要な時間を確保する

ここは忘れられがちです。

報酬や権限を整えても、本業の量が変わらなければ、単純に仕事が増えただけになります。

StockSunの企画解説でも、一人への作業集中による運用の破綻を挙げ、企画段階で担当・時間・工数を決めることを勧めています。参考:YouTube企画の立て方完全ガイド

YouTubeに週何時間使うのか。その分、どの仕事を減らすのか。休みや繁忙期には誰が引き継ぐのか。

評価・権限・時間。この3つをセットにして、初めて「任せた」と言えると思います。

6. それでも私が「編集は外注」をすすめる理由

「そこまで体制を整えるなら、編集も社内でやった方が安いですよね?」

動画制作が本業ではない会社なら、私は編集の外注を強くおすすめします。特に、未経験の社員が本業と兼務する場合です。

理由は、編集が担当者の時間を大きく使う工程だからです。

素材を確認し、不要な部分を切り、話の順番を整える。テロップや図解を入れ、音を調整し、内容の誤りがないか確認する。

AIを使うにしても、「どの説明を残せば伝わるか」「この切り方で意味が変わらないか」という判断は必要です。

見た目を整えて書き出せることと、企業の動画として安心して公開できることには、差があります。

「社員が作れば無料」を、時間で計算してみる

たとえば、完成尺10分の動画を作るのに、担当者が20時間かかったとします。これは平均値ではなく、費用を比較するための仮定です。

年収400万円、年間の労働時間を1,920時間と置くと、給与だけでも時間当たり約2,083円。

20時間分は、約4万1,700円です。

ここには会社負担の社会保険料や、編集ソフトなどの費用は含めていません。20時間は、1日8時間勤務なら2.5日分です。

同じ制作条件で外注費が3万〜4万円なら、外部への説明や確認にかかる時間を足しても、比較する価値は十分あります。

もちろん、外注したから社員の給与支出がそのまま減るわけではありません。見るべきなのは、空いた時間を営業や顧客対応、次の企画に使えるかです。

実際に1〜2本作って作業時間を記録し、同じ条件の見積もりと比べると判断しやすくなります。

編集に追われると、肝心の改善が後回しになる

社内担当者には、顧客の悩みを集めたり、営業と相談したり、公開後の反応から次の企画を考えたりしてほしい。

ところが、編集まで抱えると、

「今日もテロップを入れていたら一日が終わった」

となりやすいんです。

編集は、構成力や情報を伝える力も身につく専門的な仕事です。だからこそ、片手間で覚えれば簡単に回ると考えない方がいい。

私が外注をすすめるのは、社内担当者が、自社を知っているからこそできる仕事に時間を使えるようにするためです。

7. 内製化するなら、「社内で持つ部分」と「外に任せる部分」を決める

私がすすめるのは、次のような分担です。

業務基本の分担
目的・顧客像・伝える強みの整理社内で責任を持つ
顧客の質問や事例の収集社内で進める
企画・構成の作成社内を中心に、AIや専門家も活用
撮影・出演続けられる方法を選び、必要に応じて外注
動画編集兼務体制なら外注を優先して検討
内容の事実確認・公開承認社内で担当と期限を決める
数値の振り返り・改善判断社内PMが責任を持ち、必要に応じて専門家と相談

最初から企画や分析を判断できる人がいなければ、その部分も外部に相談すればいいと思います。

大事なのは、社内に「何のために運用しているのか」「次に何を改善するのか」を判断する人がいることです。

編集を外注したとしても、社内の承認が毎回止まってしまえば、投稿は続きません。分担を決めるときは、外注先に渡す素材と、社内で返事をする期限まで決めておきましょう。

8. 始める前に、この5つに答えられますか?

内製化を検討している経営者の方には、まず次の5つを確認してほしいです。

  1. YouTubeで達成したい事業の目的は何か
  2. 運用責任者は誰で、何が評価や報酬に反映されるのか
  3. その責任者は、どこまで自分で決められるのか
  4. 運用に使う時間を、誰のどの仕事から確保するのか
  5. 撮影・編集・承認が止まったとき、どう対応するのか

ここが曖昧なまま「まずは週3本」だけ決めても、続けるのは難しいと思います。

あわせて、成果を確認する時期と、見直しの条件も決めておきましょう。「すぐ売上が出ると思っていた」という認識のずれは、避けたいところです。

また、目先の商談や成約を助けたいなら、チャンネルを毎週更新する以外にも選択肢はあります。

サービス紹介や導入事例を作り、問い合わせ後のメールや提案時に活用する方法については、こちらのコラムで詳しく解説しています

まとめ|内製化の成否は、「任せ方」で大きく変わる

AIを使って、少ない人数でYouTubeを運用していく。その方向には、私も可能性を感じています。

ただ、企画を作る負担が減っても、担当者の評価が曖昧で、上司の気分で計画が変わり、本業の合間にすべてを詰め込む運用は続きません。

私が現場で何度も見てきた失敗には、この共通点があります。

だからこそ、内製化を進めるなら、

責任者を決める。成果と取り組みを評価する。権限と時間を渡す。そして、編集など負担の大きい部分には外部の力を使う。

この順番をおすすめします。

「誰か、YouTubeをやっておいて」から、一歩進めてみてください。

社内で企画・撮影を進め、編集を任せたい方へ

旭康太郎 コンテンツ企画室では、埼玉・東京近郊の事業者さまの動画制作をお手伝いしています。

「撮影まではできるけれど、編集が追いつかない」
「担当者が編集に時間を取られ、企画を考えられない」
「社内で続けられる制作の分担を相談したい」

そんな段階からご相談いただけます。

※編集のみも承っております。

現在の体制や制作したい内容を伺い、無理なく進められる方法を一緒に考えます。

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